国家公務員採用試験の変遷と構造

平成24年度より国家公務員採用試験で大幅な制度変更が実施された。従来の試験区分(国家Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種)が廃止され、総合職・一般職という名称に変更された。
以下では、国家公務員採用試験の制度変更の背景と、新たに導入された試験区分(総合職・一般職)について概略を説明する。
制度変更の背景国家公務員採用試験の試験区分は、1983年から国家Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種が導入された。(それまでは「上級甲種試験」などの試験区分で実施されていた)
意外に思われるかもしれないが、従来の国家公務員採用試験では、学歴による受験制限は設けられていない。例えば、高卒者が国家Ⅰ種を受験することも可能であり、大卒者が国家Ⅲ種を受験することもできた。能力の高い者を広く官吏として採用するシステムだったのだ。
ところが、大学進学率が5割を超え、そこに就職難が重なったことで、国家Ⅱ種ばかりか国家Ⅲ種にも大量の大卒者が流れ込んだ。そこで、90年代後半から国家Ⅲ種に年齢制限(21歳未満)を定め、大学4年生や大卒者の受験を不可能とした。 なお、郵政民営化により郵政事務が国家Ⅲ種から分離されたことで、試験区分ごとの採用枠としては国家Ⅱ種が最大となった。
2012年度からの試験区分再編は、学歴の垣根をさらに明確にしたものだ。
総合職試験従来の国家Ⅰ種は総合職試験に名称変更となった。合格率5%の超難関試験である。
総合職試験は、院卒者試験と大卒程度試験に分けられている。院卒者試験は大学院卒であることが受験条件とされ、院卒者の雇用確保への配慮がうかがわれる。一方、大卒「程度」試験においては、従来どおり学歴による受験制限は設けられていない。
総合職試験で画期的なのは、教養区分の新設である。教養区分では、法律や政治などの専門試験を行わず、面接や小論文などにより合格者を選抜する。民間企業の採用方式に近く、国家公務員への門戸が広げられた印象だ。なお、国家公務員採用試験は基本的に春募集だが、教養区分のみ秋募集となっている。民間企業への就職活動が思うようにいかなかった学生にとっては、リベンジの機会になるだろう。
ただし、教養区分の合格者がどれだけ採用されるかは不透明である。平成25年4月採用では、わずか4省庁が教養区分からの採用枠を設けたにすぎない(いずれも若干名)。
晴れて総合職試験に合格すると、官庁訪問などを経て、志望する省庁から内定を得ることとなる。各省庁での選考においては、国家公務員採用試験の結果(採用候補者名簿の序列)が重視されてきており、最難関とされる財務省では上位50名から採用者を決定していると言われている。ただし、院卒者試験や教養区分の新設などにより、こうした慣行にも多少の影響があるだろう。
言わずもがな、総合職試験合格者の未来は明るい。警察庁であれば、初任から警部補となり、7年目には無試験で警視に一斉昇進する。他省庁であれば、4年目前後で海外留学を経験する。
一般職試験従来の国家Ⅱ種とⅢ種は一般職試験へと名称変更となった。合格率は10%程度となっている。
一般職試験は、大卒程度試験と高卒者試験に分けられている。国家Ⅲ種で問題となっていた高卒者の雇用確保については、試験区分を分けることで対応した形だ。
特定独立行政法人の多くが、国家公務員採用試験(一般職試験)の受験を必須としている。一部の特定独立行政法人では、総合職試験の合格者に対しても採用枠を設けている。特定独立行政法人についてはこちらを参照のこと。
また、国立環境研究所など特定以外の独立行政法人においても、国家公務員採用試験(一般職試験)の受験を必要とする団体がある。